新城市の若者議会から考える国内における若者政策の発展

新城市 若者議会

NHKの18歳選挙権の特集でも取り上げられた、愛知県新城市の若者議会を中心とする若者政策のヒアリングに静岡県立大の津富教授はじめ、ともに活動するメンバー、静岡市役所の方とともに訪れた。記事の本文に入る前に、新城市役所自治推進課の皆様や、共に新城を訪れヒアリングを豊かなものにしてくれた皆様に、お礼を申し上げたい。

近年、子ども議会や若者議会の取り組みは全国各地で行われているが、すでに決まっているシナリオがあるお飾り参加のものがほとんどである。そんな中、新城市の若者議会は役所の職員が丁寧に若者の声を聞き、どうやったらその声を市政に生かせるかを本気で考えている。

新城の若者政策の発展

新城市が若者政策に取り組み始めたのは平成26年度からで、新城市の穂積市長の3期目の公約で若者政策が掲げられたのが最初であった。穂積市長が若者政策に取り組もうと考えたのは、新城市が主催する市民まちづくり集会にて大学生が進行を務めたワークショップを見たのがきっかけだった。ワークショップの中でSNSを活用する大学生を見て、大人にはない、若者の力に触れたという。そのほかにも、新城市は消滅可能性都市のひとつであることや、少子高齢化によるシルバーデモクラシーなども、若者政策に踏み切る要因となった。

初期は、若者議会の前身である「若者政策ワーキング」を立ち上げ、全19名(高校生2、大学生7、社会人1、役所の若手職員9)で、一年間で21回にわたる会議を重ね、新城市の若者政策について議論をした。ワーキングでは「若者が活躍し住みたくなるまち」などのテーマでワークショップをして、その後、若者からのアイデアで新城のまちを巡るバスツアーなどを行った。

色々と暗中模索をしながら若者政策ワーキングは進んでいたが、ある時期になると若者たちから自主的に「大臣制」という提案があり、若者たちが責任感を持ったのか、全体としてギアがかかった。「大臣制」とは、若者政策ワーキングを6つのグループに分けて、それぞれで議論をすることである。実際には、若者議会、若者総合政策、統括、キックオフシンポジウム、連携、成人式の6つのそれぞれのグループに分け、代表者は「◯◯大臣」と名付けられた。上述した21回という会議の数字は、全体での会議の数のことで、グループごとの会議の数をカウントしていない。グループごとの会議も含めるとどれだけ多くの会議を重ねていたかがうかがえる。

新城の若者議会はイギリスのニューキャッスルのYouth Parliamentを知った若者からのアイデアではじまった

大臣制のひとつに「若者議会」のグループがあり、このアイデアは若者自身から出たものであった。新城市は世界中のニューキャッスルと名の付く都市とアライアンスを結んでおり、2年に一度場所を変えながら交流事業をしている(新城は英語にするとニュー・キャッスル)。

若者政策ワーキングに参加していた若者のひとりがこのアライアンスの国際交流事業に参加をしていて、その報告を若者政策ワーキングの中でした。その若者からは、世界中から集まっていた若者たちが自分たちのまちについてよく知っていること、イギリスには若者議会と呼ばれるものがあることなどが報告され、新城にも若者議会をつくりたい!という意見が若者たちから出た。

(イギリスには昔から若者議会が存在していて、全国レベルの若者議会も存在しているが、この記事では詳細については触れないこととする)こういった流れから新城に若者議会を設置することとなり、年齢制限や任期、報酬など詳細なことについても若者たちと共に考えていった。

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若者の意見で若者政策・若者議会を条例化

議論を重ねていく中で、若者議会や若者政策ワーキングは、穂積市長が若者政策をマニフェストに掲げているから実現しているのではないか?という疑問が出た。

そこで、持続的に若者政策を新城で発展させるために、若者議会及び若者政策を条例化することが意見として出た。これについても条例のたたき台を若者たちがつくり、市の職員が内容を詰めて、若者条例、若者議会条例が(平成26年)12月議会で可決された。議員たちからは、「議会」という言葉を使うことへの反対意見が出たようだが、あくまでも市長の諮問機関としての立ち位置ということで可決された。

若者議会のスタート

こうして若者議会は27年度にスタートを切ることになった。議会の仕事は単純で、政策をつくり市長に答申をするというものである。委員の詳細に関しては以下の通りである。

年齢 16歳〜29歳
任期 1年
定員 20名
報酬 3,000円/回
予算 1千万円

募集方法は、すべての委員に関して公募をした。市内の若者へ無作為抽出で若者議会のお知らせを送ったり、学校、電車広告など、様々な広告を出して広報を行った。結果として定員20名に対し、予想を上回る24名からの自主的な応募があったという。実際に委員になったのは、高校生10名、大学生4名、専門学生1名、会社員5名である。このほかに、今まで若者政策ワーキングに関わっていたメンバーや、市の職員、地域おこし協力隊などの人が、メンター役として参加をしている。メンターの年齢制限は39歳までである。

報酬の3,000円に関しては、市長の諮問機関の委員には報酬を支払わなければいけない決まりがあり、他の委員会ならば7,000円程度の謝礼金を出しているところ、若者たちで話し合って、お金のためにやっているわけではないということで3,000円という金額設定になった。

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具体的な若者議会の流れ

若者議会は全15回で構成されていて、うち3回は本物の市議会議場を使って行われる。おおまかには以下のようなタイムスケジュールである。

  1. 所信表明、議長選出
  2. 隔週での会議
  3. 政策の作り方に関する合宿(外部講師を招いての1日研修)
  4. さらに会議
  5. 市役所の部長クラス及び、市長への中間報告
  6. 報告での意見を受けての再検討
  7. 地域意見交換会での地域住民との意見交換
  8. 市長答申

詳しい内容については新城市のホームページを参照。若者議会に関しても、若者政策ワーキングの大臣制の時と同様に、6つのチームに分かれて議論を重ねた。全体会議の15回に加えて、チームごとの分科会計60回、地域意見交換10回と、かなり多くの議論をして、市長答申に至っている。

若者議会から出た6つのアイデア

6つのチームに分かれた若者議会からは、チームごとに以下の市長答申が行われた。

  • ふるさと情報館リノベーション事業

図書館の郷土資料室を勉強スペースにするというアイデア。郷土資料室の利用が少ないことと、テスト前になると図書館を利用したい高校生で混み合うため、このアイデアが出された。

  • 情報共有スペース設立事業

JKPUB(情報共有パブリックスペース)という名前で、駅前にあるスペースを情報共有の公共スペースにして、若者主体の市民活動を生み出す場につくりかえるというもの。

  • 新城市若者議会特化型PR事業

新城市の市外へのPRをする事業で、SNSを活用したアイデアが出された。

  • いきいき健康づくり事業

健康づくりのために消費カロリーが高いバブルサッカーのイベントを企画したもの。

  • お喋りチケット事業

高齢者に対して「お喋りチケット」を配布し、一枚につき1時間若者と話しができる。1時間が終わった後は、チケットを若者に渡し、そのチケットは新城市の地域通貨に変えることができる。高齢者と若者の交流を狙った事業。

  • 若者防災意識向上事業

防災訓練や、地域消防団の若者の参加が少ないことに問題意識を持ち、参加を促す仕組みを目指した事業。

まとめ

新城市の職員さんからは、若者政策には大きく3つの可能性があるという説明があった。

まず第一に、若者はまちにとっての資源であるということ。穂積市長が若者政策に取り組もうとするきっかけにもあったように、若者には底知れないパワーがあり、バブルサッカーなど大人では中々考えつかないような奇抜なアイデアを持っていること、若者は未来志向であることなどが「資源」という言葉を意味している。

第二に、若者議会が成長の場になっていることだ。実際に若者議会の委員とお話しする中で委員自身が言っていたことで、若者議会の様々な経験を通して、スピーチや、振る舞いなどが成長した実感があるという。学校ではスピーチや大人たちに囲まれて意見をいう経験はあまりなく、そうした経験が成長につながったようだ。

第三に、波及・変革。これは委員の他に、若者議会に参加していない若者や地域住民への波及効果や、市民の意識変革などに若者議会がつながったということだ。最初は若者議会を冷たい目で見ていた市民たちも、若者の本気に触れ、考え方が大きく変わったというようなこともあったそうだ。

人口規模が小さな自治体の方が若者政策がうまくいく!?

若者政策(ここでは若者参画政策)において、最も重要なのは若者への実質的な影響力の担保だと考えている。若者たちが考え、意思決定をしたことで、実際にまちが変わるということである。今回紹介したような新城市の若者議会をはじめ、国内ではいち早く若者議会(正式には少年議会)を取り入れ、10年以上の歴史がある遊佐町のように、実際の予算をつけて若者に意思決定権を与えることが必要である。

こうした国内の若者参画の取り組みを見ていると、人口規模がある程度小さいまちの方が参画がうまくいっている傾向にある。(新城市4.9万人、遊佐町1.47万人)これには、①まちの規模が小さいことで、よりまちのことを自分ごととして考えることができる、②まちの規模が小さいため、役所内での意思決定が早い、③人口規模が小さな自治体にとって、若者の人口流出は早急の課題で、自治体が真剣に若者参画に取り組む、などの理由が分析できる。

国内の若者参画の先進事例はヨーロッパの思想を土台にしている

また、若者議会に限らず、国内の若者参画で先進的なものほとんどがヨーロッパ各国の取り組みを参考にしている。

今回紹介した新城市がイギリスのニューキャッスルの若者議会を参考にしていたほか、このブログでも紹介した高知こどもファンド事業はアドバイザーにドイツ研究をされている早稲田大の卯月先生がはいっており、上で紹介した遊佐町の少年議会は町長がイギリスを訪れ若者議会を見たことがきっかけとなっている。これもこのブログで紹介した東京都杉並区のゆう杉並で行われているユースワークはヨーロッパ諸国を中心に発展してきたもので、職員もスウェーデンなどに研修に出かけている。世田谷の若者が進みすぎで紹介した、世田谷の若者政策の文章もやはり、スウェーデンを訪れた委員のひとりが書いたものである。

このように国内の先進的と言われる若者参画の取り組みのほとんどがヨーロッパの思想からはじまっており、取り組みだけを真似するのではなく、思想を取り入れるということが必要であるように思う。

若者参画において実質的な影響力の担保が重要であると述べたが、取り組みだけを真似していては、格好だけがヨーロッパ式のお飾り参加になりかねないだろう。新城市の職員さんから自然に「若者は資源である」という言葉が出てくるように、若者政策にどんな意義があり、若者参加とは何なのか、という根本的な議論をしなければ若者参画の発展はない。改めて、若者観を見直し、若者ともに社会を担うパートナーとみなし、若者政策に取り組んでいかなければならない。