子ども期に自分を揺り動かす重要な他者と出会うこと。高知市こども・子育て・まちづくりフォーラム

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高知市 こども・子育て・まちづくりフォーラム「こどもと保護者がまちづくりに関わる意義」

この記事は、平成29年7月30日(日)に開催された高知市主催の「こども・子育て・まちづくりフォーラム」のパネルディスカッション「こどもと保護者がまちづくりに関わる意義」の報告記事です。(すべてを文字起こしできたわけではないので、若干のニュアンスの違いや文章が足りない部分があるかもしれません)

このパネルディスカッションを通して、とさっ子タウンやこうちこどもファンドといった高知のまちづくり活動への参加経験を経て、田部さん(高校2年生)の進路に大きな影響を与えたことがよくわかる内容でした。

また、その影響の根本には、重要な他者(おもしろい大人?)の存在があります。

コーディネーター:

卯月盛夫 先生・卯月先生

パネラー:

安藤哲也(NPO法人ファザーリンク・ジャパン)・哲也さん

安藤桃子(映画監督)・桃子さん

畠中智子(株式会社わらびの代表)・智子さん

田部未空(隠岐島後高校2年生・こどもふぁんど経験者)・未空さん

子どもは地域のパスポート?

(卯月先生)哲也さんの話が興味深かった。自己紹介を兼ねて、各パネリストから感想と質問もしてもらいたい。

(桃子さん)安藤桃子です。私は映画監督をしている。高知に移住して4年になる。高知で「4mm」という映画を撮って、それがきっかけになり、結婚式をあげた。2歳になる子どももいる。トークイベントではなんでも話せるので、夫の話をする。夫は会社員ではなく、山で修験道をする人で高野山で出会った。その人を里に引きずり落として、結婚した。収入はないので、私が稼いでいる。子育てなどをどうするかが大きな課題になっている。だからといって、夫も修行があるので子育てもできない。高知は「生きる」が強い県で、いきいきと過ごしていける。子どもは親の姿を見ているというのは印象残った。友達が家に来た時に子どもがドアを全て閉めているのに驚いていた。これは親が徹底していること。

(智子さん)子どもが地域へのパスポート、ディズイーランドよりもワンダーランド。というのには共感した。子どもはもう成人している。昔は子どもをパスポートにして、学校に行き、PTAもやった。役員を決める時に難航すると言っていたが、私は自分から手を挙げていた。そこで楽しいものだから、夫も誘ってみた。ただ夫はシャイだからと言い訳をしていた。シャイだということで、夫がサッカー部員をスカウトしてきて、ヒラ役員をPTAに加入した。そうすることで、お父さんの感性がPTAに入って来たと感じた。息子が不登校になることもあったが、そのかわりに私らが行ってやる(笑)ということもあった。今度30代の息子が保育園の保護者会に出かけると聞いて、少し感慨深い。

(未空さん)出身は高知。子どもファンドやとさっ子タウンに関わり、地域に関わるっておもしろいと思った。私の家族は旅行にあまり行かないが、旅行をするときは高知のいろんなところに連れて行かれた。県外への旅行があまりなくて当時は嫌だったが、今思えばそれが良かった。家に帰ったらお父さんが洗濯をしていた。それを見て驚いたが、とっても嬉しいなと思った。

(卯月先生)なぜ旅行は県内だったのか?またお父さんは洗濯をなんでしたんですか?

(未空 父)娘がこのシンポジウムに参加するにあたって、今まで自分は何もしない父親だったので何か意識的に動こうかと思い、ここ1ヶ月でやってみた。

(未空 母)いろんな方と出会ったことで、旦那が変わったのではないかと思う。

普段の仕事は株主に貢献しているだけ。

(卯月先生)哲也さんに伺いたい。こどものシティズンシップは考えていたが、お父さんのシティズンシップを考えたことがなかった。もう少し補足してもらえるか?

(哲也さん)普段の仕事は株主に貢献しているだけ。暮らしは家庭だけでなく、地域にもある。地域の一員として何かやっている、そのシティズンシップがあるか。笑顔をつくりだすのが家庭ではイクメンであり、シティズンシップかと思う。

(卯月先生)このパネルディスカッションのテーマは子どもと保護者だが、親の立場から桃子さんは何か意見があるか。

(桃子さん)高知は独立国家だと思っている。東京で生まれ育ち、イギリスにも行った、最後は高知で骨を埋めようと思った。今必要としているコミュニケーション能力だとかが、高知はガラパゴスな気がしている。県内の人がその魅力にどう気づいていけるかが重要。高知になんで来たの?何もないのに…と驚かれるが、高知には全部あるのに!と思う。住んでいて思うのは、両親は東京にいて誰も手助けをしてくれない。でも、ここにいてなんでもやっていけている。まわりの家庭もなんかうまくやれている。高知は経済社会というより、見えない経済が回っている。例えば、食べ物をたくさんもらったりして、ドアノブに毎日食べ物がかかっている。これは高知の特別なルールだと思う。育児をどうしていこうかと悩むことが多いが、高知は日本人の昔のDNAが刻まれていると感じる。法律自体違うんじゃないかと(笑)離婚率や共働きが高いのも事実なので、いまの時代にあわせたことをしたい。

(卯月先生)私も高知に20年通っているが、同じ気持ち。その特質が高知への移住やこどもにとっていいことになっていると感じるか?

(桃子さん)幼馴染が高知に移住した。彼女は学習院の出身でお嬢様だが、今はボットン便所のところに住んでいる。彼女と会ったら「超幸せ!生きているって感じがする」と言っていた。高知は教育や学歴ランキングが下だが、今更教育か?と思ったりもする。教育ではなく、「育む」という意味で良い場所だと思う。

子どもを信じよう。

(智子さん)桃子さんとは何度もご一緒しているが、いつも熱弁をふるってくれる。高知の良さを大人がこどもに伝えられるのが大事だと思う。社会の仕組みを体験できるとさっ子タウンをやっている。そこに協力してくれている人や、高校生や大学生の実行委員もいるが、みんなの根底には「高知っていいとこだよね」っていうのがあると思う。高知でとさっ子タウンに参加したことで、こどもは高知に戻ってきたいと思うのではないかと考えている。とさっ子タウンは10歳から参加できる。この10歳の意味は自分で育つ「自育」の期待を込めている。とさっ子タウンでは「子どもの力を信じよう」をキーワードにしている。高知はいいところだと帰巣本能を高めているのではないかと思う、本当にそうかは未空さんに聞きたいが(笑)

(未空さん)とさっ子タウンはイベントとして参加していた。仕事体験ができて面白そうと思い参加していたが、その中でいろんな子どもや大人となかよくなって、地元に憧れの人ができて、そこから地域に関わりだしたと思っている。小学校は街中の学校に通っていたが、正直合わなくて、両親が山奥の中学を紹介してくれた。入学してから校長先生にこども審査員に誘われ、なんとなく参加してみた。そこで本気で高知を変えたい!と動く同世代を目の当たりにして、「くやしい」と思った。そこで自分でもプロジェクトをすることになった。行川はいいところだが、あまり知られていなかった。そこで畠中さんにも相談して、食のカタログづくりをすることになった。1000部印刷して、高知市内で配布をした。こうしたことを通して、最初は地元が好きじゃなかった気持ち(何でこんな田舎なのか、ユニバとかディズニーに行きたかった)が、ここに生まれた良かったなと思う。今は島にいるので、12時間かけて帰省するが、帰省するたびに「ああやっぱいい地域だなと感じる」。まわりのひとが「やってみんか」と声をかけてくれたことによって、自分の本気度が高まった気がする。自分が参加したことで、今はお父さんとお母さんもとさっ子タウンのこども実行委員になった。

重要な他者と出会うこと。

(哲也さん)うちの息子と同級生だが、こんな風に育ったら感動だと思う。重要な他者と出会っている。子ども達の成長過程でキーパーソンに会えるのが大事。変なおじさんといわれることもあるが、自分の人生をゆり動かしてくれるような大人を増やせるにはどうしたらいいかと考える。そういう意味で高知は子どもたちにとって良い地域なのだと思う。

(卯月先生)まず桃子さんから「高知は違う!」という問題提起があった、そんな風土にあぐらをかかないでとさっ子タウンや新しいことをはじめているのがすごいなと思う。また、一度、地域を出ることによって、高知の魅力を感じられることもあるのではと話を聞いていて思った。

(哲也さん)まちづくりに必要なのは、若者・よそ者・馬鹿者というが、よそ者からのアイデアや知識の共有も大事。高知は反応が良いように感じる。(香川はあまり良くない)

(卯月先生)何か会場から質問はあるか?

(質問者)未空さんにお聞きしたい。この会に出て来たかったのは、未空さんがどんな感じなのかに興味があって来た。隠岐島後高校の取り組みは前から知っていたが、そこに女の子が殴り込んで行ったと聞いて、さすが土佐の女と思った。「こころざしを果たしに」ふるさとに戻ってくると隠岐島後高校にの校訓にあると聞いた。未空さんにはぜひ高知に戻って来てほしい。

(未空さん)綺麗事ではなく、高知に戻ってきたいと思っている。大学で戻ってくるか悩んでいたが、もう少し外を見てみたいと思っている。小さい頃は自分には何もできないと否定的だったが、自分は地域の人と出会うことで変わったと感じている。

(卯月先生)未空さんは特殊な人だと感じるか?それともこういう人はどんどん出てくるのか?

(哲也さん)子どもはみんなポテンシャルがある。しかし、そこで未空さんのようにキーパーソンに会えたりとか、親が応援してくれたりとかがある。そうした意味で特殊なケースかもしれない。

(未空さん)中学時代に友達と食のパンフレットを作ったが、無理やり友達を誘っていた。でも、友達は楽しそうにしてくれていた。友達のお母さんとうちのお母さんが話していて、地域と関わるようになって友達が変わったと話していたと聞いた。何かきっかけがなければ、変われなかったかもしれない。私の場合はきっかけを与えてくれる人がまわりにたくさんいた。こうしたきっかけがあれば誰でも地域への愛着心は持てるものだと思う。

(哲也さん)最後は家族。家にあたかかい家庭が待っているかどうかが大きな要素だったりする。家の環境が良くないと子ども達は家でいたたまれず、いじめになっていたりする。子どもが安心して過ごせる家にするために、お父さんが安心な家をつくるのが仕事だと思う。安心基地としての家や地域があることが、地域参加に繋がるのではと考えている。

(卯月先生)重要な他者というのがキーワードになっている。

(哲也さん)僕は地域の寅さんを目指している(笑)

(桃子さん)高知は寅さんばかりだ(笑)

(智子さん)たしかに未空さんは特殊なタイプではあると思うが、彼女以外もとさっ子タウンに参加して、重要な他者の影響を受けているように思う。参加している小学生は、実行委員に参加する高校生に憧れる。高校生は大学生に影響を受けて進学意欲がなかったのに変化したと聞いている。大学生は大学生で大人たちに影響を受けて、仕事観に影響を及ぼしている。影響を及ぼす循環がとさっ子タウンの中にあるのが良い。単なる職業体験ではなく、いい影響を受ける仕組みに育ったと感じる。そういえば、とさっ子タウンの中に映画監督の仕事はまだない。(笑)

(桃子さん)映画監督はもうからないですよー(笑)

高知にすべての本質がある?

(卯月先生)もうお一方会場から質問はあるか?

(質問者)安藤桃子さんに伺いたい。私は東京生まれで静岡、ブラジルを経由して高知に来た。高知はいいなと思う気持ちはあるが、なんとなくいいなという気持ちになっている。映画監督という仕事をされている立場から、高知の良さをどう捉え、どう表現されるか?

(桃子さん)ブラジルからの高知というのがよくわかる(笑)私はすべての本質がここ(高知)にあると感じている。職業柄、観察するのが好きだが、高知の人を観察しているとここにいる限り自分に嘘はつけないと思った。自分自身が魂で生きているのかを問うことにしている。高知に来たらすっぽんぽんにならないと生きていけないと感じる。高知人は子どもからおじいちゃんまでみんなすっぽんぽんで歩いている。高知は本質で生きている。デザインの世界でもちょっと体裁よくしようということはできない。人間というのは無意識に自分自身を隠すことがあるが、ここではそれはできない。

(卯月先生)最後にパネラーから1人一言聞きたい。もっとこうしたら高知がもっと良くなるのにという提案を最後に聞きたい。

(未空さん)私は学校の先生に言いたい。もっと協力してほしい。隠岐島後高校に入って、何かしたいと言えば先生が協力者になっている。食のカタログをつくるときに最初は先生とやっていたが、トラブルがたくさんあって2年目からは親とやることになった。地域の人などのまわりの人は支えてくれたが、先生は支えてくれなかった。

(智子さん)今日のテーマを振り返る。今日の話を聞いて、今の高校生はすごいと思った人が多いと思う。地域の町内会に高校生などをぜひ招き入れてほしい。小学5年生を町内会に入れていた地域もあり、そこはうまくいっていた。地域のまちづくりに関われるようにしてほしい。

(桃子さん)高齢先進県と言われる高知ではあるが、今日は子どもがキーワード。死に近い高齢者と、生に近い子ども。両方神様に近いのだと思う。この間をつなぐのが働きに出る世代。その輪っかをつくることが大事。地域ごとに対抗心をもってやるのもすごいと思う。

(哲也さん)行政のフォーラムだと行政に求めてしまいがちだが、子育ては行政がしてくれるわけではない。シティズンシップを持つ人であれば、3日以内に何かアクションを起こしてほしい。

(卯月先生)これからの社会を考えるときに理論ではなく、感情だと感じた。そういう意味で高知は最先端なのかもしれない。高知はコミュニティ経済だと思う。ドアノブに食べ物がブサラ下がっているという話ではないが、人と人が繋がることでコミュニティ経済を実践している。今その高知がどういう状況にあるのかを理解する時間となった。