民主主義を体感する場としての若者議会の可能性(後編)

この記事は前編からの続きになりますので、お気を付けください。

少年議員たちが生み出した政策

後編では早速、少年議員たちがどんな政策を生み出したのかについて紹介していきたいと思います。

今年で第13期になる少年議会ですから、今までに実現した政策は13×2~4個(年度によって異なる)あります。この記事では、その中で、今年のものを中心に担当者の方から紹介いただいたものなどを取り上げていきたいと思います。

また、行政の事業は成果を出すために、ほとんどの事業について2〜3年程度(例外もあります)は継続することになっています。しかし、遊佐町の少年議会でできた事業は、基本的に単年度事業です。ちなみに、前の期に行っていた事業を、現役の少年議会が継続したいと考えた場合は、もちろん継続可能です。このほかに、45万円の予算内でできないことについては、一般質問(町への要望)という形をとることができます。

中高生人口760人のまちに起こった奇跡

第13期の少年議会が生み出した政策は2つあります。そのなかでも、驚いたのが「遊佐ミュージックフェスティバル」です。遊佐町や隣町の酒田市で活躍するバンドグループ、歌やピアノが上手な個人や、ソーラン節など、若者たちのミュージックフェスティバルを少年議会が企画しました。この企画は第1期から継続している取り組みだそうです。

前編でも紹介しましたが、遊佐町の中高生の人口は約760名です。そんな中、この音楽祭には出演者・参加者合わせて、なんと約300人が集まったそうです。300名ですよ!もちろん中高生以外の参加者もいたでしょうが、遊佐町の中でも大イベントになったに違いません。

また、第12期の時のミュージックフェスティバルでは、少年議員のアイデアでゲストに朝倉さやさんを招いたそうです。もちろん、アポ取りなども彼らがしたとのこと。実は遊佐に行くまで、朝倉さんのことは知らなかったのですが、かなりの有名人ということを発見しました。

第13期少年議会が実現したもうひとつの政策は、遊佐の特産物をPRするパプリカレシピ集づくりです。遊佐はパプリカの生産者数が全国1位なんです。

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町内にレシピを募集し、住民から様々なアイデアを集めて、レシピ集をつくったそうです。自分たちがつくってみたい!と思って、カタチになった瞬間は本当に嬉しかったと関わっていた高校生が話していました。IMG_1982

通学タクシーの整備を。

これは少年議会として、町に要望したケースです。遊佐町には電車が一本取っているのですが、なかなか本数が少ないんですね。なんと、1時間から長いと2時間に一本です。これでは、電車を一本乗り過ごしたら、次の電車は1時間後です。電車で通学をする高校生には不便ですよね。

そこで、電車通学する高校生のための、通学タクシーを整備してほしい!という要望をしたのです。そして、この要望は実際に取り入れられることになります。高校生の目線からでないと気づかない意見の一例だと思います。

町民がまとまるシンボルがほしい

前編で紹介しましたが、少年議会の政策立案は、中高生向けのアンケートの分析から始まります。第2期のアンケート調査では、「町民がまとまるシンボルがほしい」という意見が寄せられたそうです。そこで、少年議会は、何かできないと「米〜ちゃん」というキャラクターをつくることを思いつきます。気づけば今年で11周年。遊佐の駅前にも大きな絵があり、遊佐には欠かせない存在になっているそうです。

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ちなみに、「米〜ちゃん」は2009年になるとファミリーも登場します。(もちろん少年議会の政策です。)

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13年間の継続が地域のリーダーを生み出した

少年議会が10年目になった時に、区切りをつけてやめてしまおうかという意見も出たそうです。しかし、ちょうどその頃、少年議会の第1期に関わっていた方が、遊佐のまちづくりセンターで働くことを知ります。これを受けて、少年議会を通して地域のリーダーが育ち、しっかりと成果が出ていることを再確認し、少年議会は継続することになりました。そんな継続が、いまでは、教科書に載るまでの取り組みになっています。

自分たちが求めるまちを自分たちでつくる

少年議会の一番のねらいは、まちに愛着を持ってもらうことでも、教育的な効果を期待したものでもありません。「自分たちの力で、自分たちが本当に求める遊佐の町をつくること」です。若者の意見をまちに取り入れて、若者が住みたいと思うまちを若者がつくるのです。

これってとっても本質的で素敵なことだと思いませんか?全国の若者参画のまちづくりは、前編の文頭でも指摘したように、「ゴッコ」のものがほとんどで、若者にまちづくりができるなんて思っていないかのようにも見えます。しかし、遊佐では、ミュージックフェスティバルやパプリカレシピなど、彼らの等身大のまちづくりを展開しています。これこそが、真の地方創生への一歩になるのではないでしょうか。

民主主義的な学び

また、実際に少年議会に関わっていた中高生からヒアリングするなかで、彼らが教えてくれた感想は民主主義の学びでした。例えば、自分に足りないことは、誰かに補ってもらえば良いということ、人は完璧でなくても良いことに気づいたという子がいました。人は一人ではなく、多くの人の力を借りて生きていることを、少年議会を通して体感したそうです。

他にも、「私は今まで人の話を聞いているようで、聴いていなかった」と話してくれた女の子もいました。表面上の話ではなく、その人が本当は何を言いたいのかを考えるようになったといいます。本当に良い政策をつくろうと、心から人と向き合ったからこその学びになったのではないでしょうか。

遊佐の担当の方によると少年議会は、議論を通して合意をしたり、代表制を取っていることなど、「民主主義」を体感する場としても重要であると話されていました。学校の中では、制度や仕組みについて教えるので、学校の外(少年議会)では、民主主義を体感する場になっているのです。

まとめ

個人的に、まちへの愛着を育むことや、教育効果をねらいにした子ども・若者参画の取り組みは嫌いです。なぜなら、きっとそれらは副次的であるべきだからです。今回の遊佐のケースのように、中高生たちを真のまちの担い手として位置付ければ、勝手に地域に愛着を持ち、勝手に学んでいきます。実際に、今年関わった中高生たちからは、まちの印象がガラッと変わったことや、まちに誇りが持てたとまで話す子もいました。

なぜ、若者をまちに参画させるのか?という大きな問いについての答えが、その取り組みが本物であるか、もしくは偽物であるかの分かれ道です。そして、主権者教育を学校のなかで行うことが主流になていますが、やはり学校は民主主義を体感する場としては限界があるでしょう。(もちろんやれることもあります。)遊佐の取り組みを参考に、地域で主権者を育てるということも考えていく必要があります。

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